「おもてなし」のIT革命

「おもてなし」のIT革命―エクスペリエンス・テクノロジーがビジネスを変える

「おもてなし」のIT革命―エクスペリエンス・テクノロジーがビジネスを変える

所感

野村総研コンサルタントが書いた本なので、ウェブに関する事例は知っているものがほとんどだったが、さすがの調査量とまとめ方だった。ウェブに関するUXの入門としてはおすすめ。

「おもてなし」をITで再現するには
エクスペリエンス・テクノロジーとは
  • ユーザーインタフェース技術
  • 分析・管理系技術
  • 方法論・手法
  • 統合技術

筆者は、よいユーザー体験を作るための技術として、上記をリストアップしている。とかく最近のUXに対する論調では、インタフェース技術ばかりがもてはやされることが多いが、ここで注目したいのは、インタフェース技術は上記テクノロジー群の一部でしかないということである。

UXデザイナーと名乗るなら『解析もできて当然』になっていく

ITチャネルでおもてなしを実現するためには、顧客を知るための情報収集と、収集した顧客情報をもとに顧客を理解し、適切な経験価値を創出する分析・管理系技術が必要となる

おもてなしで有名な老舗旅館の女将などは、お得意様の好みを把握してノートに記し、さりげなく対応を調整していくのが普通である。女将がいかに美人で綺麗な着物を着ていても、肝心の「気が利く」部分が脱落していれば、その旅館を再び訪れたり、他人にお勧めはしないだろう。

ウェブではこれらがまさにアクセスログや購買データの収集と分析、サイト最適化に当たり、こうした技術を駆使しないと本当によいユーザー体験を提供することはできない。今後、『UXデザイナー』と宣うなら、最低限「分析・管理技術」も身につけているべきだと思う。特にウェブに関わる人であれば。

よいUXを提供する『仕組み』が必要

アンプクア・バンクでは、行員のマインドを変える一つの方法として、その給与の評価方法を、預かり資産額の大小ではなく、顧客満足度の上下と連動する仕組みに変更している

ここまでできれば相当なものだが、業績の評価の中に一部でも顧客満足度を入れてしまうというのはよい方法だと思った。


キーフレーズ

ソマティックマーカー
  • その経験に対する感情的な結果を結びつけた記憶
ZMET
エモーション・カーブ
  • 顧客接点における顧客の情動の移り変わりを分析する
RFM分析
  • Recency(最終購買日)、Frequency(累計購買回数)、Monetary(累計利益高)といった顧客の購買履歴から顧客をセグメント化する分析方法
  • Oisix:ヘビー顧客が新規顧客であったころ、共通して購入している食材を特定
  • コープさっぽろ:ポイントプログラムで優良顧客を1.32倍に
その他技術
  • レコメンドエンジン
  • サイト最適化エンジン
  • ネットプロモータースコアによる顧客満足度の数値化