人間中心設計フォーラム2011
人間中心設計フォーラム2011 - 組込み型ソフトウエアのためのユーザビリティと事例
- パシフィコ横浜 アネックスホール [F205+F206]
- 2011年11月16日 (水) 10:00〜12:00
- http://www.jasa.or.jp/et/ET2011/visitor/program_c.html
@s_e_nさんの講演メモ
2009年、2010年と毎年参加している無料フォーラムです。大企業のHCDへの取り組みがまとめて聞けるので、今年も参加してきました。
どうでもいい話ですが、このフォーラムは「組み込み総合技術展2011」のカンファレンスの一部として開催されているため、会場のパシフィコ横浜に向かう人の列はほとんどがダークスーツばかりで、Web屋の自分にとってはアウェイな感じでした。
JVCケンウッドにおけるHCD事例
和井田さんの講演。
構造化シナリオ法は手ごたえアリ
- ペルソナは使わなくてもよかった
- ターゲット像に肉付けするくらいで十分
- エンジニアはインタラクションシナリオから入りがち
- 一段上のアクティビティシナリオを書きましょうと指導
その他の利用ツール
- HCDコンセプトシート
- 1シーン5W1Hシート
- 1シーン動機シート etc.
HCD手法を社内に展開するという業務は、自分もこれまで関わってきたものなので、その苦労がとてもよくわかります。ここで述べられている「ペルソナは過剰」という文脈も、自社での展開の際に感じたものと似ているなと思いました。
また全体的に、ドキュメントが多すぎないか?という印象を持ちました。ユーザーやシナリオを定義するドキュメントを細かく作っているようでしたが、最近はプロトタイプ⇔フィードバックをどんどん繰り返す方がよいものができるという報告が多く、この後の八田さんの講演とずいぶん印象が違うなと感じました。
アドバンスデザインにおけるHCD
八田さんの講演。
今昔のプロトタイプの違い
- 昔のプロトタイプ:画面UIだけが対象
- 今のプロトタイプ:周りの環境も含めたシーンや関係性を考慮
プロトタイプの役割の変化
- 構造、機能⇒ディテール、存在感、アンビエンス
- 構造はパターン化されてきたので、違いが出しにくくなった
- 直感性の注文が多くなった(サクッと、ヌルッとなどの擬音語)
- 設計⇒メッセージング、価値
- 頭⇒ハラオチ
新しいプロトタイピング手法
- 人力で動かすペーパープロトタイプ
- アクティングアウト
- ハードウェアスケッチ
- フォトモデリング
これからのデザインプロセス
- デザイナーが観察調査⇒即デザインができれば
- 写真を撮って、その場ですぐ書き込むなど
以前から「八田さんの話はすごいから聞いておけ!」と噂で耳にしていましたが、今日実際に聞いてみて、なるほどその意味がわかりました。明らかに他の講演者の方とは違うアプローチで取り組まれており、またプレゼン資料もシンプルで洗練されていて、聞いていてワクワクしました。資料に動画を埋め込むのはイメージが沸きやすいので、ぜひ自分も真似したいなと思いました。
ソフトディバイスさんのオフィスは工房のような感じで、そこでたくさんのプロトタイプを作り、仮説⇔検証を繰り返すのだそうです。個人的に特に面白かったのは、実写の上にUIを描き込んでしまうという「フォトモデリング」の手法です。画面UIだけではなく、状況や環境なども含めて考えないといけないというエクスペリエンスデザインにおいて、非常に手軽に設計や検証が行えそうだなと感じました。
リコーにおけるHCDの実践
島村さんの講演。
- コンセプトカタログという冊子を制作した
- 3名のペルソナも登場
- プロトタイプを用いてフィールドテスト
- β機でカラーリング、形状、サウンド、ボタン配置などの検証
- モニターによる最終評価
- 全て終わるまでに3-4年の開発期間
他の製品開発への展開
- 今回は非常にうまくまわった事例の紹介
- 全ての製品で適用できているわけではない
プロダクト開発におけるHCDの王道のような事例を紹介していただきました。驚いたのは、開発前にコンセプトカタログというフルカラー数ページの綺麗な冊子を作っていたこと。そこにはペルソナ3名も描かれていて、販促用パンフレットのような力の入れ具合に見えました。
ただ気になったのが、開発期間が4年近い(!)ということです。プレゼンを聞いていて思ったのは、こういったテレビ会議は、うまくするとMacBookやiPhoneのFaceTime等を使えば代用できてしまうのではということです。価格も20万近いので、コストパフォーマンスという点で見ると…。
HCDの手法は、「どう作るか」に焦点が当たりがちですが、「そもそも作る必要があるのか」「何を作ればよいか」「誰をターゲットとすべきか」というビジネスの戦略部分についても一緒にレベルアップしていかないと、せっかく現場でよいものを作っても、導入効果は半減してしまうのではと最近感じることが多いです。自戒も含め。