パフォーマンス・マネジメント

パフォーマンス・マネジメント―問題解決のための行動分析学

パフォーマンス・マネジメント―問題解決のための行動分析学

これから教育にも関わることが多そうなので、評判のよかった本書を購入しました。
いま読み終わって、自分の中での人間に対する考え方がガラッと変わりました。感情論や慣習に頼らない、科学的なアプローチを用いることで、日常の問題をもっと上手に解決できるようになりそうです。

注意するよりも褒める方がよい理由

  • パフォーマンスマネジメントには、強化の原理を多用するのが望ましい
    • 強化の原理…行動することで、何か良いことが起こったり(好子)、悪いことがなくなったりすると、その行動は繰り返される
    • 弱化の原理…行動することで、何か悪いことが起こったり嫌子、良いことがなくなったりすると、その行動は繰り返されなくなる
  • 全ての行動の原理は、「〜する」という行動にあてはまる
    • 「〜しない」という行動には当てはまらない
    • 行動とは、死人にできないことすべて

普段の仕事や家庭生活において、相手が望ましい行動をとってくれていなかった場合、これまでは「できていないことを注意する」のが当たり前だと思っていました。しかし、このパフォーマンス・マネジメントの元となっている行動分析学によると、次のような理由から、これは全く検討外れの対処方法だということがわかります。

  • 「しない」ことは行動ではないので、強化も弱化もできない
  • 注意して行動を弱化するより、「望ましい行動」を強化していく方がよい

これにはハッとさせられました。本の中では事例として、工場の従業員が安全行動をとったときにポイントを与えて、それを貯めるとくじが引けるようにしていたり、学校の先生が良いことをした生徒にシールをあげていたりと、行動を強化するための努力が紹介されていました。最近はゲーミフィケーションという言葉も流行していますが、まさしくこの「行動の強化」とリンクする内容だなと感じます。

できないのは、意思が弱いからではない

  • 行動は環境との関係、すなわち行動随伴性によって引き起こされたり、抑えられたりする。意思の力によってではない。
    • 望ましくない行動が強化されていたり、望ましい行動が弱化されているのが問題。そこを改善しない限り、問題は解決しない

勉強や仕事のパフォーマンスが上がらないのも、実は意思の力なのではなく、前述の好子と嫌子を用いて説明することが可能です。このことを心得ておけば、問題の原因を正確に特定することができ、またパフォーマンスが悪い人に対して個人攻撃に走らなくても済みます。辞めたり腐らせたりしてしまっては大変。

正確で迅速なフィードバックの大切さ

  • 行動の結果によって行動を強化したり弱化するためには
    • 行動と結果の関係は明確に
    • 結果は行動に対して確実に
    • 結果の伝達は行動の直後に
  • パフォーマンス・フィードバック
    • 達成度について記録をつけていくだけでも動機付けになる

この内容は、架空の会社での売上対策会議の様子に沿って説明されていたのですが、これがそっくりそのまま自分がいた環境でも見た光景だなと苦笑いするしかありませんでした。
確かに普通の会社では、いくら頑張って担当プロジェクトを成功させても、それによる成果への影響がどのくらいなのか正確に測ることは難しいし、給料がすぐに上がる訳ではないし、下手をすると不景気のせいで全員の評価は据え置きのまま、なんてこともあるかもしれません。組織をマネジメントする人間がここを知っておかないと、頑張って仕事に取り組むことが弱化されてしまう恐れさえあるなと感じました。