ザ・ゴール2 ― 思考プロセス

ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス

ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス

TOC (theory of constraints:制約理論)とは

イスラエル出身の物理学者エリヤフ・ゴールドラット博士(Dr. Eliyahu M. Goldratt)が提唱した生産管理・改善のための理論体系。SCMの背景理論の1つともいわれる。

TOC(theory of constraints) − @IT情報マネジメント用語事典

泣く子も黙るTOC。今までTOCと聞くと、「あぁ、生産管理のボトルネックのあれでしょ?」というくらいの知識しかありませんでしたが、今回この本を読んでもっと上のレイヤーの話なんだなと再認識しました。

ちなみに、「ザ・ゴール1」を読まずに2から読んでしまいましたが、特に問題ありませんでした。むしろマーケティングに関わる人はこちらだけでもよいくらい。

例によって小説テイストで書かれているので、いわゆるハウツー本のような重たさがなく、読みやすかったです。

<思考プロセス>がいかに重要か

  • 現状問題構造ツリー
    • まず最初に、その状況におけるすべての問題を関連づける因果関係を図に表す
    • 1つか2つのコアの問題が、他の全ての問題の原因である
    • 問題のほとんどは症状であって、問題ではない。これをUDE(Undesirable Effects)と呼ぶ
    • 代表的なUDEをいくつか挙げるだけで、コアの問題は見つけられる
  • 流通やマーケティング、販売などのビジネスのありとあらゆる局面に制約条件は存在しており、これを排除していかに効率よく企業活動を運営するかがTOCの本質なのだ

現状問題ツリーの例(「思考プロセス」より)

なるほど、ビジネスのコアの問題を探り当てることと、生産流通におけるボトルネック工程を見つけることとは、「制約条件を排除して効率的に企業活動を行う」という意味で同じアプローチです。

今の自分の仕事に当てはめてみると、生産能力というのはユーザーテストを行う能力(人的リソース、設備等)であり、ボトルネックは…営業でしょうか?やはりどうしても案件と案件の間が空いてしまう場合があり、「全ての生産能力を販売している」とは言えない状態だと思います。

また以前読んだ『イシューからはじめよ』の、「問題の解決より問題の策定にリソースを傾けるべき」という主張とも通じるところがあるなと思いました。

マーケット・セグメンテーションのメリットを活かす

本では、実際に主人公が企業内の問題を解決していくプロセスを通して、マーケティング的にも学ぶところが多かったです。

  • マーケティングとは、新しい策を打ち出す事ではなく、マーケット・セグメンテーションのメリットを活かすことにある
  • マーケット側の価値観を高めるには、必ずしも製品を物理的にアップグレードする必要はない
  • 製品の説明から始めるのではなく、まず買い手側が抱える問題を指摘する(現状問題構造ツリーを用いて)

セグメンテーションのメリットを活かすというトピックでは、「飛行機の座席」の例が挙げられており、なるほどなと思いました。全く同じ「飛行機の座席」でも、対象となる人や状況によってその価値は変わり、それが最大のところで販売しています。もちろん、このときに製品を物理的にアップグレードしているわけではありません。

とかく製品やサービスの料金は、原価を元にした価格表を作って一律にしてしまいがちですが、こうした『市場側からの価値』に基づいたアプローチはぜひ取り入れたいなと思いました。