そうだ、葉っぱを売ろう!
- 作者: 横石知二
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2007/08/23
- メディア: 単行本
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一昔前に「葉っぱビジネス」で一世を風靡した、徳島県上勝町の実際の物語です。まだちゃんと読んでいなかったので、映画化されて盛り上がっている内に読みました。
映画『人生、いろどり』公式サイト
http://www.irodori-movie.jp/index.html
「彩」は、結果である
元々は農協の職員だったという横石さん。今では大成功例として有名になっていますが、ここまで来るのには段階があり、苦労も多かったようです。
- 異常寒波でミカンが全滅。季節物野菜の栽培に切り替えて信頼を得る
- 一年中収穫できるシイタケ栽培を推進
- 女性や高齢者でも稼げる仕事として、葉っぱビジネス「彩」を開発
最近は会社の業務で多くの方から「シニアビジネス」について相談を受けますが、最初から「どんな分野がよさそうですか?」「今期末までに結果が欲しいんです」などと言われることもままあります。
しかし、今回の内容のような本当の成功事例を見ると、特にシニア向けに特化しているわけではなく、もっと大きな枠で見た時にぜひ必要だと思われる仕組みをコツコツと時間をかけて育てていくしかないんだろうなと実感させられます。
ただ「シニア層が増えるから」「そこに売りたいから」というだけでは、立ち上がりも早いですが、終わるのも早いのではないかと思います。
パソコンを使うおばあちゃんたち
ビジネスの拡大とともに、上勝町では農家にパソコンを設置していきます。
高齢者が多く通うパソコン教室に勤務し、高齢者のIT利用を広げたいと考えている自分にとって、ここが一番気になるところでした。
目的が明確でない人たちにパソコンを使ってもらうことは、大切ではないことがわかったのだ。用がない人に渡しても、パソコンはただの箱でしかない。
これは他の自治体に視察に行った際の感想ですが、パソコン教室でも全く同じ実感を持っています。WordやExcelを習いにきた人にいくらインターネットを紹介しても、用がなければ使われないのです。
一番工夫したのは、毎日見たくなる情報を流すことだった。「上勝情報センター」とタイトルをつけて整備した情報ページでは、毎日、市況の状況などを配信した。
そこで上勝町が取ったのは上の方策。毎日の売上金額や他の農家と比較した売上ランキングなども公開されているそうで、ちょっとしたゲーミフィケーションだなと感じます。使っているおあばちゃんからは、「市況の流れを読むのがおもしろい」という声まで出ているようです。
パソコンで毎日数字を見て、商品の売れ行きを予測することが脳のトレーニングになり、ランキングを見れば闘争心がわき起こる。散歩をしていても周囲の葉っぱを観察して収穫を計算する。こうして生活にハリが出て、結果的に上勝町は医療費も抑えられているそうです。
上勝町の高齢者人口は3位だから、医療費も当然3番前後に入るだろうと思って見てみると、なんとこちらは32位なんですよ。金額も26万円ですから、1位の村の6割もないですね。
「みんなが働ける社会づくり」のために何ができるか?
- 70歳になっても80歳になっても、自分の出番があり、仕事をきちんと評価されて楽しい生活をしているから、生き生きした、自然な笑顔が生まれている。
- お年寄りだからできる仕事を生み出し、稼ぐことで人も町も元気になれば、それこそが「福祉」になっている
最近では、「年金をもらえるのはいつになるのか」「いったい何歳まで働けばいいのか」という嘆きをネット上でもよく見かけます。しかし、上の記述を読むと、本来働くことはそんなに忌み嫌われるものではないはずです。
高齢者には気持ちよく、無理のない範囲で働いてもらう。
これからのシニアビジネスとは、そういう社会の実現に役立つ継続的なものであってほしいですし、現在従事しているパソコン教室やユーザビリティ改善支援もその一環だと思っています。