ヒューメイン・インタフェース
ヒューメイン・インタフェース―人に優しいシステムへの新たな指針
- 作者: ジェフラスキン,Jef Raskin,村上雅章
- 出版社/メーカー: ピアソンエデュケーション
- 発売日: 2001/09
- メディア: 単行本
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所感
こちらの「モーフィング・コンピュータ」の話を読んでから、ずっと気になっていたジェフ・ラスキンの著作。
読んでみたら、自分の中でUXに関する久々のヒット本。人間の認知心理学的な特性をどうデザインに適用するかというテーマで、難解な部分も多い本だった。全体的にハードとソフトを絡めた情報端末全体のあるべきデザインが語られているが、そこにある原理原則は個別のUIデザインでも十分に参考となるものばかりだった。その中の多くは、今もAppleの製品の端々で垣間見ることができる。
そしてちょうど最近、あまりコンピュータに詳しくない人にソフトの使い方を教える機会があったのだが、現在のウィンドウ、マウス、ファイルシステム等から構成されるコンピューティングの限界を痛いほど実感していたところだった。
この辺りに関する叙述も多く出てきており、納得しながら読むことができた。
個人的に非常に衝撃的だったフレーズは、
- 直感的、自然なインタフェースなどない
- ボタンを増やすことを恐れない
- 最高のUIデザインができれば、カスタマイズなど必要ない
- 初心者と熟練者という分け方は間違っている
などなど。普段つい「初心者にはこれ、熟練者にはこれ」といった方法でデザインを進めてしまうことが多いので、もう一度そのアプローチを見直す機会になった。
キーフレーズ
意識と無意識、習慣
- 理想的なヒューメイン・インタフェースとは、ユーザの作業におけるインタフェース要素を良性の習慣へと変えるもの
- ユーザが円滑に仕事を達成できる習慣を形成させるようなインタフェースをデザインする
- 固定された回答を要求する全ての確認手順は、すぐに使い物にならなくなってしまう
- OKしかないダイアログ、ファイル削除のダイアログ
- 目を閉じていても操作できる
- 注意を作業内容からそらさない
- そもそも注意以外のものは見えていない
注意
- 注意はたった一つしか存在しない
- マジシャンはこういった性質を堂々と利用している
- 音や映像を再生することで動作の遅れを隠蔽できる
モード
- モードは、間違い、混乱、不必要な制限、複雑さの温床となる
- (参考:ソシオメディア上野さんのModeless and Modal)
- トグル形式よりも、ラジオボタン形式に
- 今の状態がわかっていないと結果を予測できない
- ラベル付けも難しくなってしまう
- もしデザイナーがUIを最適に設計できたのであれば、カスタマイズは害悪でしかない
- 代わりに、疑似モードの導入を検討する
- ボタンを増やすことを恐れない
- コマンドは「名詞(対象選択)⇒動詞(機能選択)」の順番で
モノトニー
- ジェスチャと動作が1対1対応している状態
- モードが無くモノトニーに基づいた製品を使用することによって、病みつきとも言える習慣が形成される
初心者と熟練者という神話
- この2分化は間違っている
- 簡潔さ、機能の明確さ、可視性と、モードの無さ、モノトニーからくる効率は、競合するものではない
- うまくデザインされたインタフェースでは、初心者向けと熟練者向けのサブシステムに分ける必然性が無くなる
半透明ダイアログボックス
- ダイアログボックスを削除するストロークが不要
コンピューティングシステム
- ファイル名に最適なものは、コンテンツそのもの
- OS+アプリケーションの組ではなく、コマンドの組にすべき
- コマンドを必要に応じて購入できるような形式がよい
直感的、自然なインタフェース
- 事前にコンセプトを知ることなく、学習段階を必要とせず、合理的な考えを行うことなしに獲得できる知識などない
- 実際は、自信の経験と知識に基づいて、類似性から判断している
- 「自然」というのは、「非常に学習しやすい」という意味
- マウスが一般的ではなかった時代は、それさえ自然で直感的ではなかった
ナビゲーション
- ZIP(Zooming Interface Paradigm)
- 位置や目印を記憶するという本来人間に備わっている能力を活用できる
- (参考:プレゼンテーション用ソフトウェア Prezi)
- ラベリングは簡潔さよりも明快さの方を常に優先すべき
- アイコンは実は可視性の原則に反している
- アイコンよりも言葉を用いる方が賢明である
- サインオンはパスワードのみでも可能
- きれいなすっきりした画面と、使いやすいインタフェースを混同してはいけない