「わかる」とはどういうことか

「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学 (ちくま新書)

「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学 (ちくま新書)

所感

サブタイトル「認識の脳科学」とあり、認知心理学に関する本かなと思ったが、自分にとってはInsightのあまり得られなかった本だった。内容としては確かに間違いなく「『わかる』とは何か」が切々と、悪く言うとダラダラと書かれていた印象。


多分この本は書き方が悪い。具体例のつもりで出している身の回りの描写など、いつの間にかそちらの内容自体の説明に力が入ってきてしまったりして、大切な部分が全く浮かび上がってこない。教授のつまらない授業を黙って聞いているようで、苦痛な読書だった。余分な文章を除いたらページ数が半分になるのでは。


唯一関心があったのは、認知障害の話と、エントロピーの話。前者はこういった認知能力は歳とともに低下したり障害が出たりして、生活に支障をきたす可能性があるということ。どんな能力が普段何気なく使われているのか実感できる。



同じ脳科学に関する本であれば、池谷氏の「進化しすぎた脳」の方が断然おもしろい。

脳や認知の仕組みから、人間の可能性を想像させてくれるワクワクした本。しかも文章もかなり平易に書いてあり、わかりやすいのも特徴。



キーフレーズ

心像

心に思い浮かべるイメージ
目の前のものと照らし合わせ(同定)を行う

「わかる」とは「分かつ」と書く

区別できることが「わかる」の基礎となる
整理できるとわかったと感じる
中国では物事をわかるために陰と陽に分類した

生命の本質はエントロピー*1を減少させること

自然の原理に反して、物事を分かつ、秩序を生む行動によってエントロピー減少

「知能」とは

常に変化する状況下で、そのときに最も適切な行動を選択できる能力だと言える

*1:エネルギーが均等になろうとする傾向で増大する