ペルソナ作ってそれからどうするの?

所感

よくセミナーに足を運ばせてもらっている棚橋氏の本。400ページ近い上に2段組で相当なボリュームだったが、非常に価値のある一冊だと思う。まさにこの業界、職種における「教科書」ができたといった感じ。大ボリュームだけあって、日本流のUCDプロセス全体を描くことから、各プロセスにおけるオペレーションの注意事項まで丁寧に記述されている。


文中には非常に多くの質の高いリファレンスがあり、初学者はここから読書を発展させていくことも可能だろう。多くの書籍の中から共通のコンセプトを導き出してまとめ、昇華させてしまう力に驚かされる。


本の中で最も印象に残ったのは、デザインとは表層を作ることではなく、人々の暮らしを設計すること。そしてそれを実装するためには相応の過程を経ることが非常に重要であるという部分。


また各章末にある架空プロジェクトの事例がなかなかおもしろく、実際にどう仕事に適用していくのかをイメージする助けになった。これがハイコンセプトにあった「物語を語る力」なのかと実感。


さらにこの本を通して、日本のデザインにおいて「茶道」が与える影響の大きさを改めて感じた。前から気にはなっていたが、そろそろ始めてみようかと検討中。


キーフレーズ

デザインとは

どんな世界を実現したいのか?人々の暮らしをどんな風に変えたいのか?
日常生活の基本的動作を観察し研究することで人と向き合ったデザインを生み出す(内田繁
動きの中にしかデザインはない(深澤直人
「観察」に慣れてくると、それまで見えていなかったものが不意に見えるようになる

デザインの対象はウェブサイトではなく、ウェブサイトを使う人々の暮らしそのもの
人々のどんな暮らしをアップデートするのかを考え定義する必要がある

UCDプロセス

方法さえ身につければ誰でも創造性を発揮できる
UCDが目指すのはあくまで人々の生活や仕事のイノベーションである

体制作り、問題の定義

ひとりで考えない ブレインストーミングの活用
普段から問題意識のない人に問題は発見できない

データ収集、分析

評価グリッド法とラダーリング
目に見えず、かつ極めて高度な構造化作業なので、みんなで手を使いながら考える
5つのワークモデル、事例
ペルソナを作れるほどユーザーを理解できるようになる過程が大事
頭で整理するのではなく、感性で統合する

プロトタイプ、テスト

多くのアイデアを検討してはじめて最適解の選択ができる
認知的ウォークスルー
Tobii社アイトラッカーの利用

UCDを社内に浸透させる

小さく始めて大きく育てる
UCDに関するPR活動を続ける ⇒ブログ、Wikiなどが有効
プロジェクトの定義と報告をしっかり行う