イノベーションの達人!

イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材

イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材

所感

前作はどちらかと言えばイノベーションを生み出す「環境」の話が多かったのに対し、今作は実際にその環境の中で自分はどう考え、どう振舞えばいいのかの指針を具体的に提示してくれている。


本では内容を10人の「人材」に例えて説明しているが、これは考え方とかアプローチ方法の種類とも言えるので、今の自分の中にでもすぐ取り込める内容になっている。しかも記述が例に富み、非常にイメージしやすい書かれ方なのでサラサラと読み進めることができた。


そして蛇足だが、例示で出てくるIDEOで働く人のバックグラウンドの多様さと深さ(T型人間)には毎度驚かされる。こんなに優秀で好奇心の強い人材が集まってればそりゃ強いだろうと。同時に、人生難しいこと考えずに何をやってもいいんだな、と背中を押される気分にもなった。梅田望夫氏が言っていた「好きを貫き」、けものみちを切り開いていくことで結果的に特別なキャリアができていた、という生き方にも通じるのかも。


最後の章でも、イノベーションを実現しようとする姿勢は一つの生き方だと言っている。個人的なバイブル『ハイコンセプト』もそうだが、こういう「新しいタイプの価値ある人材」が早く一般社会でも評価、処遇されるといいのになと思う。

キーフレーズ

人類学者

学術的な知識というよりも、知識に基づいた直感的な感覚、暗黙知で仕事をする
ヴュジャデ:前に見たことがあるものを、あたかも初めて見たかのように観察すること
典型的な人生などなく、今日は必ずいつもと違っている
100ドルあったら何を買うか?流行を知る質問
少し変わった人、若者(あるいは子供)を見るのがよい

実験者

ローファイなプロトタイプを即座に製作する
実験を通して体験することは1000回のインタビューにも勝る
できるだけ多くの種類のプロトタイプを早い段階で作る「リスクのぶつ切り」
ビデオ製作も有効な手段

花粉の運び手

巷のトレンド、多方面への関心を他人にも喜んで伝える
熱心なメモ魔で、発見したことをこまめに書き留めて蓄えを増やす
様々な場所へ出かけること

ハードル選手

ノーといわれても諦めない
専門家というのは本質的に従来の常識を守る立場にあるもの
ハードル選手は専門家も尊重するが、最終的な判断を自分で下し扉を見つける

コラボレーター

非フォーカスグループ:異様に熱中した人々からひらめきを得る

監督

人々を鼓舞して導き、調和を育み、機会を明確にする
始動はブレインストーミングから

経験デザイナー

どういう経験をするだろう―平凡か?非凡か?
顧客の余計な手間を省いてよい経験を与えることで、代価を支払ってくれる
コールドストーン「あなたはアーティストなのです」
気分や感性を清涼飲料水のデザインや物語にくるんで売る
顧客の経験を「旅」に例える
「欲求階層」:モノは十分だから、今度は経験を集めたいと思う
経験のプレゼント:コンサート、ショー、料理、もてなし

舞台装置家

ブレインストーミング専用のエリア
環境を流動的にすることによってマンネリを防ぐ

介護人

あなたをそこで唯一の顧客だと感じさせてくれる

語り部

仕事の基盤が人間の物語を聞いて解釈することにある
「〜について〜だったときの話を聞かせてください」
物語を通じてチームを団結させ、課題に人間らしく取り組ませることができる
コイルで綴じたレポート⇒雑誌形式のコンセプトファイル、ビデオ
インフォマーシャルは良い語り部の例
各自が好きなものを持ってきて、それについての物語をする