アフェクティブ・クォリティ

アフェクティブ・クォリティ―感情経験を提供する商品・サービス (JSQC選書)

アフェクティブ・クォリティ―感情経験を提供する商品・サービス (JSQC選書)

所感

日本がこれまで得意としてきた効果効率の追求や機能的な品質向上は既に「当たり前」となり、乾いた雑巾を絞るような状況が続いている。そこでこれから求められるものは何かという問いに対して、ひとつの方向性がこの本で紹介されている。それが「アフェクティブさ」の追求。


本書では認知心理学的に「アフェクティブさ」を分解し、その活用方法を事例とともに考えている。AppleIDEOなどの今ノッている企業に加え、日産や東芝などの日本企業の取り組みについても叙述されているので、この辺りのコンセプトの実現イメージがしやすい。


興味深かったのは「アフェクティブな経営」という表現。ただ確かに経営判断を行う上でこのあたりの定量的尺度が必要であるが、そもそも計測困難なことには変わりがないので、個人的にはこういったコンセプトを理解できる人間がマネジメントに参加するのが一番現実的でスピーディな解だと考えている。


また品質工学的な視点からの叙述も多く、これまで目に見える数字重視だった少し上の世代の人にも、あまり抵抗感なく新しいコンセプトを紹介できているのではないかと思う。


キーフレーズ

アフェクティブ・クォリティ

ユーザーにどのような感情を起こすか十分にかつ慎重に考えられた製品やサービスの質のこと
食べ物を選択するときの「おいしい」という感情などもこれに当たる

安全・信頼・ユーザビリティ・その次に来るもの

ユーザビリティは当たり前品質となり、当然満たしているべき条件
既に製品を魅力的に見せ差別化する競争力ではなくなった

喜びの概念を人間工学のアプローチに取り入れる動き

"new human factors"
"Hedonomics"
"funology"
"感情科学"

感情の二次元モデル

ヴェイレンス(valence:感情価)軸
覚醒水準(arousal:活動レベル)軸
これに6つの基本感情をプロット可能

私たちが「感情」と考えているもの

多くの説で下記の2種から成るという点が共通している
・本能的な基本感情(本能的プロセス)
・価値観や道徳などの高次な処理(内省的プロセス)

ユーザーエクスペリエンスとの共通点

感情は一時点で生じるものではなく、時間軸を考慮する必要がある
WrightとMcCartheyによるUXのフレームワークで説明
期待→接触→解釈→熟考→価値評価→詳述

企業における取り組み事例

マツダクラフトマンシップ
日産:PQ評価の7つの観点、デザインとブランドマネジメント
トヨタ:レクサスマインドグループ、マイスター
東芝:デザインの3段階、感性品質と感動品質
プラマイゼロ

慶応・福田の研究より

「実際に使ってなんぼ」の製品においては、デザインに力を入れた製品ほど、エクスペリエンス部分をきちんと作り込まないと、かえって大きなネガティブ感情を与えてしまう(Fukuda,2008)

アフェクティブ・マネジメント

「その意思決定はアフェクティブかどうか」を経営上の価値判断基準として重視している経営
これが普及する為には、定量的尺度の研究、開発が急務である