発想法
- 作者: 川喜田二郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1967/06/26
- メディア: 新書
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所感
これはすごい。2009年で読んだ本の中では圧倒的な1位。自分にとってのInsightが多すぎて、正直まだ消化しきれていない状態。
中学生のときの「リーダー研修会」で、一度だけなんとなく体験したKJ法。「カードの内容をつなげて文章を作るだけで、手法と言うほどのものか?」と当時は思ったものだが、本書のあとがきで述べられている通り、どうやら自分は不完全な亜流を体験してしまったらしい。こうしてまた縁があるとは。
これまでKJ法と言うとカードをまとめてそこから何かを紡ぎ出す方法という理解だったが、実際はもっと大きな枠の話であるということが今回初めてわかった。そして書斎科学と実験科学、野外科学という3つの研究手法を『W型問題解決モデル』としてマッピングすることによって、非常にすっきりとした問題解決モデルをイメージすることができるようになった。これはそのままユーザー中心デザイン(UCD)にも繋がる話であり、高度経済成長真っ只中でこれが書けるという先見の明にただただ感服する。
DESIGN IT! w/LOVE
W型問題解決モデルより拝借
おもしろかったのは、各章のトビラ絵がその内容をKJ法A型図で表したもので、しかもページ番号まで振ってあるのに気付いたとき。最初に見たときはよくわからないが、内容を読んでから再び見るとなるほどと納得できる。おかげで図とテキストの組み合わせで理解が進むという例をすぐに実感できた。
また40年前の当時から「この激動の時代に」とか「個別化が進んでしまった」とか、今も昔も現状問題認識のレベルが変わらないのは興味深い。ということは、これからの40年もこういった問題解決プロセスは役立つ可能性が高いのでは。
あと実際このブログを書いているプロセスは、不完全ながらもKJ法に近いことをやっているのではと思う。断片化されたキーフレーズを前後させながら構成を模索し、小見出しをつけ、そこから全体の所感を導き出すという手順である。せっかくなのでもう少し意識して、トレーニングも兼ねて編集を行うようにしたい。
ひとつ懸案なのは、実際の業務等においては、参加者全員にKJ法についての共通認識がないと活用が難しいこと。明日の会議からいきなりKJ法でやります、なんてことはできないので。しっかりした継続的な習得プログラムを日本の教育カリキュラムに組み込んでもいいレベルだと思う。
キーフレーズ
induction:帰納法
deduction:演繹法
abduction:発想法
研究における3つの科学
書斎科学、実験科学、野外科学の区分を設定する
実験科学は仮説検証、野外科学は仮説を発想させる方法
事前準備
内部探検:徹底的な問題の表出化および共有を行っておく
外部探検:「関係のありそうな」情報まで広く集めること
観察
野外観察の4条件
とき、ところ、出所、採取記録者がないと有効なデータとして扱えない
人間行動の観察の7つのポイント
類型的行動、状況、主体、対象、手段方法、目的、結果
ジャンケンの例
その日のうちに「まとめの記録」を作ってしまうのがよい
推奨プロセス
ブレーンストーミングでアイデアの集積をし、KJ法で構造計画に創り上げ、パート法で手順の計画に展開する
ブレーンストーミング
約2時間でカード数十枚から百数十枚程度の生成が目安
もとの発言の土の香りを残した一行見出しがよい 「酒は飲むべし」
まとめる
全量を流し目で見て、お互いに親近感を覚える紙片を集める
集めた紙片の内容を圧縮化して再び一行見出しをつける
群から離れているものは、無理にどれかに入れなくてもよい
最初に小分けし、それらを集めつつ大分けに編成して行く流れを死守する
収集がつかなくなる恐怖心を克服すること
2、300枚で3階層程度になり、最終的に5〜10個の大グループができる
A型図解法
一つのグループを展開し、空間配置する
配置したものに棒線、リングで関係性を記入する
この時点でまず意味の構造として「わかった」という感覚が得られる
AB型による文章化
理解の進んでいるものから文章化し、A図上で関係のあるものへと進める
⇒各章のトビラ絵を文章化したものが本の内容になっている
図解と文章とは関係認知の性質が違い、相互補完的である
双方がピッタリとかみ合わされたときに最も鋭い「わかった」感覚となる
Basic Abductive Data(BAD) 累積的処理により副次発想が可能
叙述と解釈を明確に区別して書くこと
けじめのなさは、自分の集めた情報の貧弱性を覆い隠すため
解釈の根拠が正直にデータに根ざしたものなのか?が大切
不確かなら不確からしく表現すること
創造体験と自己変革
KJ法を通して得られる創造体験は、自分を創り変える力を持っている
思索という心の筋肉を使わざるを得ないが、それが「人間らしさ」を培う
会議への応用
「まとめる」自信があればあるほど、自由奔放な意見の発散を恐れなくなる
図解によって討論の繰り返しを避けることができ、会議が生産的になる
現場から逃避するな
正直に現場を受け止めて、そこから問題をつかみだしてくる
外のものを虚心に受け入れて考えようという「受身の精神」