600万人の女性に支持される「クックパッド」というビジネス

所感

序章を読んだだけでガツンと頭を殴られたような衝撃を受けた。この一冊に、インターネットのサービスとはどうあるべきか、そしてユーザーエクスペリエンスとは何かということがギュッと詰め込まれている。読み始めた夜は興奮して眠れなかった。


まず感動したのは、経営者佐野さんの「心からの笑顔をどれだけ増やせたか」「料理がおいしくなるか」という信念の存在。UXも広告も全てはここに繋がってくるため、この安定した支柱が仕事を進めやすくしている。


UXに限って見ると、レシピを載せるフレキシブルでわかりやすいフォーム、ログ解析を用いた関連検索ユースフロー改善、信頼関係を結ぼうという意図が見える画面設計など、サイト改善のお手本と言ってもいいものがザクザクと見つかる。


こうした定量/定性分析を用いたアプローチはどれも高いレベルで実現されており、驚かされたのと同時にそれができる環境が非常にうらやましいなと思った。ユーザーテストなどは専門家と一緒に取り組んだのだろうか?
最近痛感するのは、UX改善は担当チームがやるだけではなく、組織全体で取り組まないと大きな効果が見込めないということ。そういう意味で経営トップの理解というのは非常に重要。


また広告、マネタイズ手法なども、他とは一線を画すアプローチが多く、Win-Winとして大きく成功している。広告を見たユーザーから感謝されるという一節などは、インターネットというメディアの持つ可能性を感じさせてくれ、思わずこちらも嬉しくなってしまった。


Webディレクターやマネジメント層などに強く薦められる一冊である。


キーフレーズ

男性に比べて厳しい女性ユーザー

忙しい主婦は画面が出てくるまで1秒以上待てない
3回クリックして情報が出てこなければ閉じてしまう
⇒レスポンスをUXの一環としてこだわるところはGoogleと一緒

心からの笑顔をどれだけ増やせたか

人間が欲しいものなんて、たかが知れている
欲しいものが手に入ったところで幸せになれないじゃないか

ユーザーはそんなにたくさんメッセージを受け止められない

2006年のリニューアルで機能を大幅に制限、掲示板も削除
「レシピを載せる」だけを全面に押し出す
キッチン用品としてのクックパッド

楽しく入力できないと

ログ解析により、材料と手順を行ったり来たりできる仕組みに
小説を書くみたいにレシピを作る
修正が簡単で、レシピを進化させていける
最初に写真をアップするとやる気がわいてくることがユーザーテストで見えた
写真は最もキレイに見える形に自動で調整される

説明が必要なサービスは、やはりレベルが低い

レシピを載せることに関しては説明を見ないでもできるようにしなければならない
文字数によってクリック率が変わってくる
13文字、24文字を超えると可読率が下がる
問い合わせボックスを大きく目立つ位置に置いて意思表示をしている

日本の製品には説明が多い
アメリカでは言語習慣がバラバラだから直感的なものを作ろうとする

ユーザーの期待を上回る動線を用意する

リアル店舗でいう空間設計と同じ
「肉じゃが」⇒「肉じゃが 簡単」⇒「簡単 お弁当」
ウォークスループログラムで仮説の検証を数百万件レベルで繰り返した
検索エンジンから入ってきた場合はリファラーを参照して対応を用意する

一人ひとりのユーザーといかに信頼関係を築くか

グーグルアースでの投稿可視化アプリにより、個人をイメージする習慣をつけた

広告を見た人から「ありがとう」と言われるサイト

まぎらわしい広告は絶対に扱わない
レシピコンテストは仕組みがシンプルでルールも明確
どれだけファンが作れたか、それこそがコミュニケーションの指標
一人ひとりを積み上げていくために、ネットというメディアは有効

デザイナーとアーティストは全く違うんです

ロジックがあるのがデザイナー
会社に入るとすぐキッチンがあるのにももちろん意味がある
レイアウトもテーピングで動線を徹底的にシミュレーションしている

もともと仕事というのは、楽しいものなんです

毎日を我慢してハワイに行くことを楽しみに生きているのはあまりに寂しい
気持ちよく毎日を過ごす方法を追求するべきではないか
ノー残業手当の設置
個人がやりたいこと、得意なこと、給料が上がること、その3つが重なるところに自分をポジショニングできるかどうか
モチベーションではなく役割を調整しなくてはならない
インターネットの浸透は、世界における日本の価値に大きな意味を持つ