ソーシャルイノベーションデザイン

ソーシャルイノベーションデザイン―日立デザインの挑戦

ソーシャルイノベーションデザイン―日立デザインの挑戦


所感


日立デザインの中身
思ったよりもHCDを推進する環境が整っているのに驚いた。立派なテストルームもあるし、またある部屋はロッカーの壁が全てホワイトボードになっていて、たくさんの絵やコンセプトが描かれている様子が写真で紹介されていた。

そして何より、デザイナー自身がユーザー調査を行い、プロトタイプを通して議論するという文化が浸透しているのが大きい。もちろん昔から取り組んでいる結果ではあるが、「HCD 1日ワークショップ」のような教育カリキュラムもしっかりしているのが素晴らしいと思った。


これからのUX担当者の仕事とは
こういう成熟したデザイン組織を見ると、UX専門家としては、知識・経験・洞察力などを持つのはもちろんのこと、最終的には教育のスキルも磨いていくべきと実感した。
やはりHCD導入の理想形は、企画者やデザイナーが自身で手法を活用するのが当たり前になることである。そこに持っていくまでの各種教育やファシリテーションの重要度がこれから増々大きくなるはずなので、そういう下積みを少しずつ始めておきたいところ。


Webサービス企業』と『メーカー』の違い
このテーマに関し、論文に仕上げるために最近ずっと考えている。
一番大きいのは、やはり事業特性(リリース後に改修できるか否か)だとは思うが、この本を読むと、産業の「成熟度合」や「成り立ち」などの影響も無視できないなと感じた。日立の場合は家電デザインから始まったため、「作る人と使う人の距離が遠い」と自覚できているからこそ、調査を重視するスタンスが自然に発生した様子。Webでは同じことが起こらないのだろうか…?


キーフレーズ

日立におけるデザイン

  • マーケットインを貫き、利益の創出に徹する
  • 日立製作所デザイン本部では、常に「人間中心デザイン」を謳ってきた


ソーシャル・サービス産業

  • 金融・医療・情報・環境などの分野・技術が融合した分野
  • 「コトのデザイン」ではなく、文脈に応じて変化する「場のデザイン」へ


「対話」の方法論

  • 知識創造のSECIモデル(共同化、表出化、連結化、内面化)
    • 「対話型ワークプロセス」として明確化
      • (Deep Inquiry、Ideation、Prototyping、Realization)
    • ISO13407のプロセスや手法と対応している
    • 全てを体験する「1日ワークショップ」を定期的に行っている


家電からスタート

  • よい家電を作るには、生活のあり方等を調査と統計に基づき科学的に分析することが必要である
  • 生活を丹念に見ていくという姿勢が、日立デザインのDNAのひとつ


据付実態調査

  • 1977年、83年、89年に行った大掛かりなユーザー調査
  • 60軒の家庭をデザイナーが調査に訪れ、暮らしぶりを徹底的に記録する
  • デザイナー自身が実際に足を運び、現場で発見することが重要


Webデザインソリューションの三本柱

  • 人間中心設計
  • ユーザー・インターフェース標準化手法
  • 見える化技術


経験デザイン

  • 経験は常に時間を伴う
  • 幅広く感性的で、情緒的な価値が求められる
  • 「経験価値」という言葉が橋渡しになった