HCD研究発表会

HCD研究発表会の聴講に行ったので感想をメモ。

本年度は、HCD-net各事業部の企画セッションと研究発表セッションのパラレルセッションで行います。
2009年度第1回HCD研究発表会
http://www.hcdnet.org/event/hcd2.php


今回は2つの部屋に分かれての発表だったので、事業部企画セッションを選択。
研究発表セッションについてはこちらを参照↓

HCD研究発表会で発表してきました|情報デザイン研究室

2009年度第一回HCD研究発表会に行ってきました!|しばわんこのUXのココロ



所感

電子政府ガイドラインは思ったよりも内容が綺麗にまとまっていて、資料として参考になりそう。


前半、NEMに関しては、一つの公式的な指標としてこれから広まってくると思うので話が聞けてよかった。ただ利用頻度の低いサービスに関しては適した指標となるが、頻繁に使われる、それこそショートカットが用意されているようなサービスに対してはそのまま適用できないので注意。


後半の企業事例では、特にNEC富士通の両方ともが、ユーザビリティを数値化することにこだわっている印象を受けた。このあたり、数値化しないと上に通らないんだろうな、ステークホルダーとの距離があるんだな、と思わず探りを入れてしまう。個人的には人を説得するなんて、実際に現場で空気を感じて、体験してもらうしかないと思っているのだが。ここが大企業のツラいところ。


富士通の発表は一見興味を引かれたが、よく見てみると、結局は個人による相対的主観尺度の集計でしかなく、バラつきが大きすぎて数値に何の意味があるのが非常に疑問。しかも被験者6-8人じゃ統計的有意性も出ないはず。
ここまでして数値化しなきゃいけない環境というのも…おつかれさまです。


おまけ
発表会終了後の浅野先生との懇親会での金言メモ。
・剣術と剣道は違う。環境が変化しても、道を極めていれば生き残れる
・酒(インタラクション)・旅(フィールドリサーチ)・読書(リフレクション)
・愛情を注ぐ一つの方法は、インタラクションをいかに多くするか
 それにより小さな変化やシグナルにも気付けるようになる

怪しい路地好き(品川駅前) | 情報デザイン研究室


電子政府ユーザビリティガイドラインの概要(HCD黒須先生)

電子政府システムの低利用率が発端
 オンライン利用拡大行動計画
 現在10-30%程度の利用率を5年後に70%程度まで上げるのが目標


政権交代の影響
 事業仕分けの対象となり、予算が不透明になっている
 担当が変わってしまい、一から勉強しなおしのためペンディング


NEM評価
 e-GOVは「6.20」という悪い値が出てしまった
 通常サイトでは4.0程度に抑えるべきところ


ソフトウェア開発プロセスの調査
 ウォーターフォール型が86.2%
 反復型が11.0%


ISO13407
 2000年の制定であり、そろそろ役目を終えたか?
 企画向けなのか、デザイン向けなのかハッキリしない
 評価プロセスが2度あり、切り分けがあいまい
 ⇒ISO9241-210として調整、発展している

NEM(Novice Expert ratio Method)の基礎(ユーアイズデザイン)

NEM
 設計者と一般利用者の操作時間を比較し、ユーザビリティ上の問題を定量把握する方法
  設計者とは熟達の極限値のことなので、ふさわしい人を選定する
 今回のガイドラインで公式に指標として採択された
 4.5を超えると問題あり、3.5あたりを目標にするとよい
 操作STEPに分割して比較することで、問題箇所を特定する
  操作性能=問題のないSTEP数/総STEP数
 ユーアイズデザイン論文発表サイトを参照
  ⇒NEMを用いたオンライン手続きのユーザビリティ評価およびモニタリング手法の提案


ユーザビリティ向上のための手法
 電子政府ガイドライン付属文書7(PDF)を参照
 有効性:タスク達成率 etc.
 効率:タスク達成時間、NEM etc.
 支援ツール:GAP FINDER on Line


 参考リンク:ユーザ中心設計のすすめ(第40回)―NEMはいかがでしょうか


NECにおけるHCD活動-研究開発及び適用事例-(NEC

ケータイ利用認知行動モデルの作成
 カーネギーメロン大学パロアルト研究所と共同で研究
 モデルの妥当性を評価し、設計変更時の説明材料として利用

 参考リンク:北米の研究機関とヒューマンインタフェースの開発で連携
  

客観的なユーザビリティ評価
 チェックリストは評価者に依存する
 非専門家にはわかりにくい
 ⇒評価手法を考案し、文書化(取り寄せ申請中)


自社商品への適用
 StarOfficeの最新シリーズで、バラバラだったLook&Feelを統一
 社外からの評判は良いが、自社では導入していない

ユーザー・エクスペリエンススケール指標-マグニチュード推定法を応用したユーザビリティの数値化-(富士通デザイン)

マグニチュード推定法を基にしたスケールの開発
 操作感を数値化し、事前の期待値と実際の満足度を2x2にプロット
 優先的に解決すべき課題を特定する

 ユーザー・エクスペリエンススケール指標 文献(PDF)
 

カーオーディオ ユーザビリティ向上の取組み

ユーザーテスト
 社内の運転環境を擬似的に再現し、20人に対して行った
 他社製品との比較を行うことで、経営層に危機感を持ってもらう事を狙った


HCDに理解のない経営層への対応に関する苦闘の記録
 「情感に訴えるデザイン」にしたことの方がウケがよいのでメイン訴求ポイントに
 ユーザビリティ向上の部分はそれにもぐりこませるようにして実現させた